春や秋の引越しシーズン前後になると「賃貸マンションの解約ってどうやってするの?」というお問い合わせが多くなります。
契約を交わしていますから、入居者さんが勝手に「引越ししました、さようなら~」だけ……というわけにはいきません。

お部屋を借りる際に署名・捺印した【賃貸借契約書】には、貸主である大家さんと、借主である入居者さんの間で交わされる細かな決め事も記載されています。もちろん、マンションや大家さんによって内容は違いますが、大抵は「解約に関する項目の条文」が明記してあります。なので、入居時に判子を押して「大切に保管して置いてくださいね」と渡された【賃貸借契約書】をまずご覧ください。

もしも契約書を失くしてしまった場合は、管理会社へ連絡してください。手続きの手順などは教えてもらえます。

基本的にはほとんどの場合が、解約予告期間に解約通知方法さえ守れば、契約期間に関係なく賃貸借契約を解約する事が出来ます。ただ、そこにはさらに細かい決まりごとがたくさんあります。

解約の流れと共に、ひとつずつ紐解いていきましょう。

いつ伝える?~予告期間~

ほとんどの【賃貸借契約書】には、「いつ解約の意思を伝えればいいのか?」の記載があります。それを【予告期間】といいます。

賃貸マンションの場合は1~2ヶ月前までに相手方に解約の意思を伝えなければならない事が多く、稀に3ヶ月前までの予告が必要となっている場合もあります。事務所や店舗は6か月前までの予告期間など、さらに長く設定されていることが多いです。

予告期間について記載されていない契約書の場合は、民法・借地借家法などの法律に則ります。例えば、民法第617条には「賃貸借の期間を定めていない契約の場合は3ヶ月前に解約の申し入れをすることが出来る」という旨が書かれています。「~の場合は」と但し書きがあるように、ケースバイケースです。自力で調べるより、お早めに管理会社へ相談することをお勧めします。

また、予告期間を守らなければペナルティとして別途支払いが発生する可能性もあります。その場合は契約書にその旨が記載されています。余計な出費・トラブルとなりやすい点ですので、なるべく早く、定められた期間を守って「引越ししたい」と伝えましょう。

では、次のページはどのように契約解除の意思を伝えるか?です。

どう伝える?~解約通知~

基本的には、大家さんが直接マンションの管理をされている場合は大家さんへ、管理会社が管理しているマンションは管理会社へ連絡をいれてください。今は後者の方がスタンダードになっていると思います。

親切な契約書の場合だと「この部屋から引越ししたい」旨の連絡方法もしっかりと記載があります。

例えば、
どこへ連絡すればいいのか?
(大家さん?管理会社?仲介してもらった不動産屋さん?)
伝え方はどうすればいいのか?
(口頭・電話・書面など)
書面が必要だとすると、規定やテンプレートはあるのか?

等といった点が書かれています。
こちらも様々なケースがありますが、ひとつ、私たち長栄の管理物件について例を挙げてみましょう。
長栄の場合は【管理会社】へ【書面で通知】する必要があり、その書面には【テンプレート】があります。

長栄の場合

解約通知には、【郵送】と【来店】の二通りのやり方があります。
※マンションのエントランスに、担当している管理センターの看板があります。

■郵送※郵送料金が必要になります。
入居時に契約書と一緒に、解約通知もお渡ししています。そちらに解約日も含め必要事項を記入してご郵送ください。
手元にない場合はこちらからダウンロードも可能です。

【ダウンロード方法】
株式会社長栄のホームページで事業所一覧をクリックする

お住まいの賃貸マンションを担当している 管理センターの詳細・アクセスをクリックする

一番下の方に解約通知書ダウンロードのボタンがあります。クリックしてその用紙を印刷し、ご使用ください。

■来店
お住まいの賃貸マンションを担当している管理センター【ベルヴィ】へご来店していただき、退去の旨をお知らせください。その場で解約通知書をお書きいただくので、印鑑をお持ちくださいますようお願い致します。

□注意事項
・トラブルの元になるため、電話での解約通知は受け付けておりません。
・解約通知書には契約書に捺印した契約者様の印鑑と同じ印鑑が必要になります。
・退去立会い日は未定でも結構です。その場合後日ご都合のいい日程をご連絡ください。

「解約」の処理はこの通知で終わりです。これ以降は「退去の手続き」に進みます。長栄の場合はこちらに退去時の流れが明記されていますので参考にしてください。

ちなみに、電気・水道・ガスなどのライフライン関係への退去日の連絡は、基本的には入居者さんご自身で行うことです。イレギュラーとして、管理会社が水道の検針をして家賃と一緒に水道代の請求をしている等の場合は、閉栓も管理会社がするので水道局への連絡は必要ありません。どちらかわからないなら、気軽に管理会社へお問い合わせくださいね。
あと、郵便物や定期購買しているものの転居届けも忘れないでくださいね。郵便物は郵便局へ、定期購買のものは販売会社へ連絡してください。これを忘れている人が多く、入居者さんから「前の住人宛てに美容院のDMがまだ届いている」と相談を受けたこともあります。

では、解約する月の家賃はどうなるのか、月末まで住まないならその分安くなるのか・・・実際、この点でトラブルになりやすいのでご説明しておきますね。

家賃は日割り計算してもらえるの?

「解約月の家賃って日割りになるの?」という点が気になる方もいらっしゃるかと思います。

まず、家賃の日割りとは何かをご説明いたします。
家賃は通常、1月分の家賃・2月分の家賃……というように、月単位で発生します。しかし、契約は必ず月初めにするわけではありませんよね。契約した日がその月の途中だった場合、その日から(もしくはその日まで)の家賃を日単位で計算することを、【日割り】と呼ぶのです。

この点に関しても、契約書に記載があるかないかによって状況が変わります。
契約書に解約月の賃料を日割りするかどうかが明記されていないならば、日割りで計算する事がほとんどです。
ただし、「解約月の賃料は日割りをしない」という記載があれば、実際に解約を行う日が月の初めであっても途中であっても、その月の賃料が満額必要になります。

また、「解約月は20日までに退去しなければならない」という【特約事項】が契約に定められている場合もありますので要注意です。

ちなみに、これらは「2年契約」等の【更新日】より前に解約・退去する前提でのお話です。【契約年数】を数日でも超えてしまうと、更新料などが掛かってしまいます。契約開始日・満了日について書いているコラムもありますので、参考にしてください。

【2年契約】は絶対に2年間住まなきゃいけないの?

賃貸物件での契約年数は2年が多いです。そのため、よく【2年契約】という言葉を耳にするかと思います。

賃貸マンションの契約時に【2年契約】だった場合、その後2年間は住み続けなければいけないと思われている方が多いのですが、それは誤解です。始めに述べたように、基本的にはほとんどの場合が、解約予告期間に解約通知方法さえ守れば、契約期間に関係なく賃貸借契約を解約する事が出来ます。

「契約期間に関係なく」という点に注目です。必ず2年間住み続ける必要はなく、【途中解約】が出来るということになります。

ただし、極端に短い期間だけ住んで、入居者さんの都合で解約したいとなった時は【短期解約違約金】を請求される場合があります。

これは契約書に「賃貸借契約始期より半年以内の解約の際は短期解約違約金を支払わなければならない」等という【特約事項】が記載されていると成立します。特に敷金・礼金なしの物件にはこういう特約が付きます。

なぜなら、大家さんは敷金・礼金をなしにする代わりに、マンション維持に関する必要経費を家賃で回収しなければいけないからです。なるべく長く住んでもらわないと、困るのです。

また、「賃貸借契約始期より2年以内の解約の際は短期解約違約金を支払わなければならない」という内容の【特約事項】だった場合は、2年より早く解約するなら違約金を払えば可能ということになります。

いずれにせよ、急な転勤が起こりやすい方などは要注意です。署名・捺印されている契約書は、「同意している」とみなされますので、事前にしっかり確認しましょう。

また、契約内容が【定期借家契約】等の場合、基本的にはその契約期間中の解約は出来ません。詳しくは「賃貸の契約について【定期借家契約】とは?」のコラムをご確認ください。

では面倒に思ったり、何となくで解約を通知・契約解除の手続きを行わずに退去するとどうなるか・・・?ご説明します。

通知なく勝手に退去すると大変なことになります!

今住んでいる賃貸物件のお部屋から引越しする・退去する・契約を解除する時は、必ずそのための通知・手続きが必要です。
「【2年契約】なのだから、2年住んだ後は自動的に契約終了になるんじゃないの?」と思っている方、そうではありません!

賃貸の契約は手続き無く「終了」とはならず、家賃の支払い義務が発生し続けてしまいます!

再び契約書がどのような内容になっているかの話になります。

「初回契約期間満了後、貸主、借主双方の申し出が無ければ、以降2年間の自動更新とする」というような文言の記載はありませんか?その場合は、大家さんと入居者さんの双方から「異議申し立てなど」がないと、自動的に次の2年間の賃貸借契約が更新されていきます。また、契約書にそのような記載が無かったとしても、当初の契約期間が満了すると【法定更新】として勝手に契約が更新される場合もあります。

つまり一般的な【賃貸借契約】だと、基本的に「賃貸の契約は更新されるもの」となっている場合が多いのです。

「契約年数が終わったら勝手に契約が終了する」と思って何の手続きもせずに引越ししてしまっても、【賃料の支払い義務】は引き続き発生します。そうなると、引越し先のマンションと元々住んでいたマンションの賃料を二重に支払わなければならないのです。必ず、契約解除の手続きをして退去しましょう。

わからないことは誰に訊けばいい?

賃貸借契約の解約には、色々なルールが存在します。そのため、事前に【賃貸借契約書】の内容を確認し、理解しておく必要があります。もし、契約書を読んでも意味が分からない箇所があれば、必ず日にちに余裕を持って、管理会社に問い合わせてください。丁寧に教えてもらえると思います。

契約の内容には一般的な内容もありますが、【特約事項】を始め、その実は千差万別です。

お部屋ごとの個別の契約内容を把握しているのは、そのお部屋の管理をしている管理会社になります。必ず、今住んでいるマンションの管理会社にお問い合わせ下さいね。

間違っても、次のお部屋探しをしている仲介会社の担当者の方(管理会社とは別の不動産会社の方)に訊いてはいけません!その方は大家さんとあなたの契約内容の詳細までは把握できていないのです。「一般的には●●ですよ~」という言葉に安心したら結局その後トラブルになった!というケースをよく耳にします。

引越しはただでさえ忙しく費用も掛かるイベントです。なるべくスムーズにいくように、わからないことは早めに【管理会社へ】訊きましょう。損をしないためにはこれが一番良いと思います。

まとめ

まずは【賃貸借契約書】の内容を確認し理解する。
この部屋から退去したい、と知らせる必要がある。
いつまでに知らせなければいけない、という決まりがある。
特約事項を始め、契約内容は個々に違いがある。
わからないことは管理会社に問い合わせる。

契約書には耳慣れない言葉で書かれている文言も多く、読み解くのは難しいかもしれません。賃貸借契約書を締結(署名・捺印)する前には、必ず些細なことでも疑問点があれば質問して確認をしましょう。不安ならメモしちゃってくださいね。

投稿者 やだ

得意分野は【マンションの設備メンテナンス】と【生活での困りごと解決】実体験を基にしたマニアックな知識と解決経験を持っている。