近年、不動産業界ではトレンドになっている【ホームステージング】ですが、一般的にはまだ馴染みのない言葉ですよね。実は今、いろいろな不動産関係の企業がホームステージングに注目しているのです。また、大手家具メーカーもホームステージング事業を始めています。

ホームステージングってそもそも何なの?

ひとことで言うと【中古物件が売れるように、家具などを使って演出すること】です。

ホームステージングは中古の住宅を、なるべく早く、できるだけ高い値段で売るために行います。家を探しているお客様にその住宅の持っている価値が伝わりやすいよう、実際に家具や小物を置いてお部屋を作ります。

ただ家具を置いてオシャレなお部屋にするだけでなく、どんな方に「ここで暮らしたい」と思ってもらいたいのか、家族構成や動線などの暮らし方も想定します。その状態で資料写真を撮影したり、内覧のご案内をしたりすると、お客様は空っぽのお部屋を見るよりも≪そこで生活すること≫を具体的にイメージしやすく、印象ががらりと変わります。

アメリカやヨーロッパなどでは、不動産売却の際にホームステージングすることは一般常識で、販売促進の手法として有効であり人気です。日本でも少しずつ注目されている考え方です。

一般社団法人日本ホームステージング協会が2013年に設立され、ホームステージングを行う人のための資格【ホームステージャー】も出来ました。

インテリアコーディネーターとの違い

よく訊かれるのが「ホームステージャーとインテリアコーディネーターは違うの?」という質問です。

【インテリアコーディネーター】は、インテリアをコーディネートするスペシャリストです。インテリアとは≪室内の装飾≫のこと、コーディネートとは≪組み合わせていくこと≫です。つまり、要望に合ったインテリアをコーディネートすることが目的になります。

それに対して、【ホームステージャー】は物件やお部屋そのものを演出することが目的です。

≪お部屋を見ていただくためにインテリアを置く≫、という認識です。最終的な目的はインテリアを見ていただくことではなく、物件が売れることにある、という方がわかりやすいかもしれませんね。
そのため、家具などの室内装飾を整えるだけではなく、掃除や整理整頓なども行います。住宅の価値を高め、「住みたい」「買いたい」と思っていただける家つくりをし、物件が売れるまで多岐にわたりサポートするのがホームステージャーなのです。

というわけで、【ホームステージャー】と【インテリアコーディネーター】は、≪家具等を扱うところ≫は似ていますが、目的が全く違うということをおわかりいただけたでしょうか。

ホームステージャーの具体的なお仕事

では具体的にはどんな仕事内容なのかを、一般的な流れと共にご説明しますね。

【中古住宅】ということは、つまり、前の入居者さんがいらっしゃった、ということです。そのため、ホームステージャーの仕事はその家の掃除から始まります。

退去された後の状態を確認して、清掃や補修をしていきます。ある程度の汚れ・破損であればホームステージャー本人が作業を行いますし、必要だと判断したらプロの清掃業者等の手配を提案します。場合によっては、遺族の方と共に遺品整理を行うこともあります。

そして清掃・補修が終わって綺麗になったお部屋に、家具やカーテン・雑貨などの小物を選んで用意し、設置していきます。
どんな方がどのように暮らすのか、ターゲットを設定します。その方にとって、居心地良く見えるようにするにはどうすればいいのか?そういった点を大切にしながらお部屋の演出を行います。

また、前の入居者さんがまだ住んでいらっしゃるうちにホームステージングを行うこともあります。

その際は既存の家具などを利用しながらになりますから、今在るものをいかに良く見せるかが大切になります。もちろん入居中ですので、その方の生活に支障がないようにという配慮も必須です。その方がたくさんの物を所有していらっしゃったら、収納に関する知識を生かして整理整頓なども行います。

その後、広告用の写真を撮影したりもします。

今はインターネット・SNS等を利用して家を探していらっしゃるお客様も多く、そこに記載する画像はとても重要です。≪写真映えする家≫というのは、お客様にとって「内覧してみようかな」という気持ちへの大きな後押しになります。

プロのカメラマンさんを紹介する場合もありますし、自分で撮影する場合もあります。いかに魅力的な写真を撮れるかという腕も、磨きたいものです。

当たり前のことですが、「住宅を売却したい」とお考えの方は様々な事情をお持ちです。そのケースバイケースに対応していくため、【ホームステージャー】にはインテリア以外にも、整理整頓やリフォーム・広報の視点など、多岐にわたる知識が必要なのです。

今では不動産売却のためだけでなく、賃貸マンションの空室対策がしたい大家さんなどからの【ホームステージング】の仕事依頼も広がっています。

というわけで、ハウスメーカー・リフォーム・家具・インテリア・清掃等の業界からも【ホームステージング】は注目され、取り入れる会社が多くなってきました。それぞれの分野にホームステージングを取り入れ、得意分野を特化させていったり他社との差別化を測ったりしているのです。

賃貸マンションとホームステージング

かく言う私も、【ホームステージャー】の資格を取得し、その知識を生かして賃貸マンションに関する仕事をしています。

このコラムを掲載しているお部屋探しサイト【ポポラート】を運営している会社、長栄は賃貸マンションの管理会社です。管理会社ですが、マンションのメンテナンスだけでなく、自社物件の大家さん・賃貸物件の入居者さんを探す仲介業など、幅広く行っています。

私はそこで≪次の借り手を見つけるサポート≫のために、【ホームステージング】の知識を使って仕事をしています。

賃貸マンションの場合は、補修や清掃は必ず専門業者が行うため、ある程度きれいな状態からのスタートになります。前途のように「どんな方がどんなふうに暮らすお部屋なのか」を想定しながら家具や小物を選んで、見積もりを出したり購入したり、搬入・配置をしていきます。

先程、「写真映えする家は内覧・販売に繋がる」という旨を述べましたが、賃貸業界においても写真はとても重要です。

「お部屋探しする」時の入り口として、≪インターネットの情報サイト≫はたくさんの情報を同時に得ることが出来ますよね。しかも、とても気軽に。家賃は?間取りは?最寄り駅は?といった情報ももちろん大切ですが、画像をみて「ここに住みたい!」「実際に見てみたい!」と思ってくださる方も大勢いらっしゃいます。

そのため、画像の質を高めたり、なるべくいろんなアングルから撮影したりと、写真に力を入れているサイトも多いです。最近は動画や360度のVR画像を導入している会社もありますよ。

実は、長栄もVR画像を活用しています。そのことを全国賃貸住宅新聞にて紹介されたこともあります!

私も360度カメラを使って、実際に撮影をしています。360度画像でVR内覧できる物件もたくさんありますので、興味のある方は一度体験してみてください!

第29長栄グランビュー下長者
第61長栄エクセレントハイム

賃貸物件の視点から見るホームステージングの難しさ

中古の売買物件と比べて、賃貸物件の難しいところは、【ホームステージングにかけられる予算が少ない】という点です。

利益目標から予算立てる、というのはどういう組織でも同じだと思いますが、その予算は利益の金額によりますよね。一戸建てか分譲マンションか等の規模は様々ですが、一生に一度の買い物とも言われている住宅の売買にかかる金額は、数千万円と大きな価格が平均価格であり、それが売れた際に入る≪利益の額≫も高額になります。

それに比べて、賃貸物件は、その一つ一つのお部屋の利益が低額です。一人暮らし用のワンルームなど、単身者用賃貸マンションともなると、1ヶ月の家賃が安くて3~4万円。ファミリーマンションでも、一般的な家賃予算は1ヶ月8~12万円のご家庭が多くなります。

さらに、単身向けの入居期間は2~4年、ファミリー向けは4~6年で退去されるケースが多くなります。数年後には空き部屋となるかもしれない、突然の退去があるかもしれない、家賃収入0円の期間ができてしまうかもしれない。こういった点は賃貸物件の特徴ですね。

それらの家賃収入などは、賃貸マンションの一棟なり一室なりを建築する・購入する・リフォームする際にかかった費用回収へと優先的に充てる場合がほとんどです。そうなると、一部屋一部屋にお金をかけてステージングすることがとても難しくなります。

月々の家賃収入や、空室の期間などを加味した上で、ステージングに充てられる予算を考えないといけないのは、賃貸でのステージングの難しい点だと感じています。
賃貸物件という限られた条件の中で、いかに「住みたいと思えるお部屋つくり」が出来るか、「映える部屋」を作り出せるか、日々格闘しています!

まとめ

【ホームステージング】はまだ耳慣れない言葉かもしれませんが、今後は日本でも新たな常識となってくるかもしれません。

売買・賃貸関わらず【新築の住宅】と【既存の住宅】では、【既存の住宅】の方が多い時代です。特に日本では賃貸マンションが多く、空室対策に悩んでいる大家さん・オーナーも多くいらっしゃいます。それに合わせて【ホームステージング】へのニーズもさらに高まると思うので、きっと時代に合わせて進化していくことでしょう。

これからは、お部屋探しをしている時に【ホームステージング】をされたお部屋と出会うことも、増えるかもしれませんね。

【ポポラート】ではお部屋の詳細ページにて【モデルルーム仕様】として家具家電を配置したお部屋もたくさん紹介しています。実際に「このまま住みたい」と言ってくださった方もいらっしゃいます。敷金礼金や家賃等の条件を変更して契約をしていただける場合もありますので、お気軽にご相談くださいね。

投稿者 おきやす

「住みたい」と思ってもらえるお部屋を作るホームステージャー。得意分野は【インテリア】【モデルルーム作り】など。幼い頃チラシに描かれた間取り図に理想の家具配置などをラクガキして遊んでいた生粋の「お部屋好き」である。 [ホームステージャー2級]