最近、テレビのニュースや新聞等で【サブリース】や【一括借り上げ】という単語をよく見聞きするようになりました。それはあるサブリース会社が違法建築の建物を建てていたことが発覚し、さらにそこにお住いの方の安全を確保できないとの理由で退去依頼をした、というニュースによるものでしょう。
大手の業者が行ったことにより、その業態は非常に注目されています。賃貸物件に暮らす方にとっては、「もしかして自分の住んでいる物件もそうなのではないか?」と心配な方もいらっしゃると思います。結果として【賃貸不動産業界全体に対しての疑心暗鬼を生む状況】となっているような気がして、非常に残念です。
私たちは賃貸マンションに関わる仕事をしているため、【サブリース】等の言葉の意味はわかっていますが、ニュースを見ているほとんどの方は「サブリース?一括借り上げ?ってなに?」と疑問をお持ちではないでしょうか。
また、インターネットで【サブリース】を検索してみると、「所有者(オーナー・大家さん)にとってのメリットは何か?」という内容のサイトはたくさんありましたが、実際にお部屋に住む入居者の方にとってのメリットについての記載があるサイトはあまりありませんでした。
そこで、入居者さんという立場にとって【サブリース】とはどうなのか?という点について、わかりやすくご説明したいと思います。
【サブリース】とは【又貸し】のこと
賃貸物件を所有者より借り、その後、自分が貸主となって第三者に貸す事を、賃貸業界では【サブリース】と呼んでおります。そして特にマンション1棟を丸ごと(全部屋)サブリースする場合を【一括借り上げ】と言います。ざっくり簡単に言うと人から借りたものをまた他の人に貸し出す、つまり【又貸し】の事です。
【転貸】(テンタイ)や【転貸借】(テンタイシャク)とも言われ、一般的な賃貸物件の契約書には、禁止事項として明記されていることが多いです。民法第612条でも、大家さんに無断で転貸を行うことは禁止されています。もし「借りている部屋を海外出張中の2年間だけ他の人に貸したいな~」と考えた場合、勝手に貸し出すのはNGというわけです。きちんと大家さんから許可をもらいましょう。
大家さんから依頼を受けて【転貸借】を専門に行う業者のことを【サブリース会社】と呼びます。
貸し出しの仕組みは【大家さん】→【サブリース会社】→【入居者さん】という図式です。
【サブリース】が人気の理由
入居者さんとの間にサブリース会社を入れる大家さんが一定数いらっしゃるのは、メリットが幾つかあるからです。大家さんにとって一番避けたいのは「空室になって家賃収入がゼロになること」です。ですが、サブリース会社は空室の有無に関わらず毎月一定の家賃を支払ってくれます。さらに、新たな入居者さんを探したり、管理業務を行ったりという一切をサブリース会社が請け負ってくれるのです。
「面倒くさいことは全部お任せして、安定した家賃収入を得られる」という大きなメリットがあるわけです。
入居者さんにメリットはあるのか?
正直、お部屋探しをしている方・入居者の方の立場で「わざわざサブリース物件を選ぶメリットがあるのか」と問われると、私個人の意見としては「メリットが無い」と思っています。
一方、デメリットとしては「住人の質が低くなる可能性があるのではないか」という点が考えられます。
住人の質が低くなる可能性があるとはどういうことか
同じマンションの住人さん、つまりご近所さんとは、なるべくトラブルを起こしたくないですよね。本来ならば大家さんも無用なトラブルは避けたいはずです。そのために賃貸物件には、契約前の【入居審査】というものがあります。これは、勤めている会社や年収などを明記した書類を提出し、家賃の支払い能力はあるか?トラブルを起こさない人物かどうか?部屋や建物を綺麗に使ってくれそうか?等といった点がチェックされる審査です。
「マンションの住人の質」はこの【入居審査】によって保たれている側面があり、住人さんの質を高くしようと考える大家さんは合格基準を厳しく設定しています。
しかし一方でこの審査が甘い場合もあります。それは【入居率を上げる】(=空室をなくす)ために【入居審査】を甘く設定し、なるべく満室にしておこうという考え方です。
先程も述べましたが、サブリース会社は大家さんと「空室の有無に関わらず毎月一定の家賃を支払う」という契約を交わしています。家賃収入は、例えばサブリース会社が大家さんから家賃45,000円で部屋を借り、入居者の方へ家賃50,000円で貸している場合は、5,000円がサブリース会社の収入となります。空室になってしまうとその収入が無いだけでなく、大家さんへ支払う家賃分がマイナスとなります。
そういったリスクを避けるために、サブリース会社は【一括借り上げ】のように多くの部屋を借りたり、借り上げ賃料を低く設定したりしています。ただ、「空室があること」「空室期間が長くなること」自体がサブリース会社にとって避けたい事態であることに変わりはありません。
そういった理由から、【質の高い住人を選ぶ】<【空室がない】という天秤になってしまう可能性があり、その物件に暮らす住人さんたちの質が低くなる可能性もあるのです。
あくまでも「可能性」ですので、全てのサブリース物件がそうだと思わないでくださいね。お部屋探しをしている方が目にする情報には「サブリース物件であるかどうか」が明記されていない場合が多いですので、気になる方は、仲介業者さんに聞いてみると良いかもしれません。
※借主がどれだけ周囲の住民に迷惑をかける人だったとしても、大家さんからは「出て行ってくれ」とはなかなか言えないのが賃貸の現状です。詳しくは他のコラムに書いてありますので、興味のある方はこちらも読んでみてくださいね。