賃貸マンションの壁に穴をあけた!修理費用は必要か?

こんにちは。賃貸物件の管理現場歴15年の山岡(やまおか)です。
賃貸マンションに住んでいると「壁にポスター貼っていいの?」「壁掛け時計ってOK?」「どこまでセーフでどこからアウト?」という疑問を持つ方が結構いるようです。なので、今回のコラムでは大家・管理人の目線から「壁に開ける穴」について写真付きで回答してみます。

但し、すべてのパターンで以下が当てはまるかというと、そうではありません。物件によって違いがあるので、このコラムは参考程度にして、最終的には管理会社や大家さんに聞いてくださいね。

原状回復について

まず前提として、賃貸物件を借りるときには、原則「借りた時と同じ状態に戻して返す」という義務が生じることを知っておいてください。

【民法621条】(賃借人の原状回復義務) 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年の変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。
参考:国民生活センター
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20230201_2.pdf(2023.04.22)

条文にある通り、通常の使い方による【損耗】や【経年の変化】は大家さんが費用を負担し元に戻します。それらを除く損傷は借りた側が費用を払い元に戻す義務を負います。
ポイントはまさにここで、壁の穴の大きさや数によって「通常の使い方だったかどうか?」が判定され、大家さん負担か借りた方の自己負担かが変わってきます。
写真付きの実例を幾つかピックアップして、この穴はセーフかアウトか?修理費用はどうなるのか?等を説明していきますね。

画鋲(がびょう)くらいまでは大丈夫

ポスター等の紙を壁に貼る際に画びょうを使うことは多いと思います。結論から言うと、ここまではだいたい大丈夫です。
理由は、穴が小さいからです。画びょうによる穴は、言われないとわからない程度の大きさに収まることが多いのです。
この程度の大きさの壁の穴は、原則「通常使用による損耗」とみられます。壁紙を張替えて消えるくらいの穴であれば問題無いということです。

しかし【大量に画びょうを刺したことが原因で壁紙の張替えが必要になった】となると「やりすぎ」判定をされて、壁紙の張替え代を請求されてしまうかもしれませんのでご注意を。

裏技ですが、画びょうを抜いた後に穴の周辺の壁紙を爪でぎゅっと寄せてくれば、穴がどこかわからなくなっちゃいます。(が、この技はコツが必要で誰にでもできるわけではないので、あんまりお薦めはしません。)
それくらい小さい穴なら大丈夫、という目安程度にどうぞ。

ビス穴は要注意

大きめのカレンダーや時計等を壁に掛けたい時は、画びょうでは心もとない為に【ビス】を選択する方もいらっしゃるかもしれません。
ビスとはらせん状の溝があるネジのことです。溝があることで画びょうよりもしっかり固定できます。ただ、固定のために壁にねじ込んで設置する必要があります。ねじ込む際は穴が大きくなりがちなので要注意です。

なるべく細いビスを選び、壁にあく穴が目立たないようにすれば、前述の画びょうの理屈で逃れられるかもしれません。
ただ、カレンダーを引っ張ったり時計が重かったりして、いつの間にか穴が大きくなり、壁紙の張替え時に下地のボードまで補修が必要になってしまったらアウトです。

最近は固定力が強い上に壁の穴を最小限にとどめる画びょうやビスも多く販売されているので、壁に掛けたいものの重さを考慮して、そういった商品を選ぶのが賢い選択ですね。

長押(なげし)ならOK

写真のように、壁の一部に横長の木がついているお部屋がありますよね。この木は長押(なげし)と言います。もともとは柱と柱を繋ぐ構造の一部でしたが、近年の建築技法の発達により構造材としてではなくインテリアとして付けられていることも多いです。

この長押の木の部分であれば、画びょう・ビス・ねじ・釘・ヒートン・はてなフック・洋灯吊等を刺して穴をあけても大丈夫です。
但し、掛けていたものの重みで木が割れてしまった、とかは「やりすぎ」判定されてしまいますのでご注意を。

元々は和室によくつけられていた長押ですが、今は洋室でも見かけます。ナチュラルな木のままのものや、お部屋のアクセントになるように塗装されたものなど様々です。

また「木」に見えても、表面に木目調のシートが貼ってあるだけのものもあります。それは長押ではなく、ハンガーや既設のフックを利用するための物ですので、ビスも画びょうも刺してはいけません。
「うちのはどっち?」とわからない場合は管理会社に確認しましょう。

こぶし大以上の大きさの穴

写真のように大きな穴は問答無用でアウトです。通常の使い方による【損耗】や【経年の変化】にはあたりませんので、お部屋を借りている方の費用負担で修理が必要です。
こけてぶつかったとか、悪気が無くても【借主の過失】なのでアウトです。

ただ、明らかにマンション側に原因がある場合、例えば「外壁から雨水が染み込んできて、壁がふやけてしまった」等があれば別です。マンション側の責任となり大家さんが修理費用を負担してくれます。
他にも、地震によるものや上階の水漏れによるものなど、「原因に自分が全くかかわっていない」とされる損傷についての修理費用は、請求されません。

まとめ

賃貸マンションの壁に穴をあけた!セーフか?アウトか?を写真付きでご説明してみました。
結局は、その穴の「修理が必要かどうか?」ですね。

修理にかかる金額の目安も参考になるかと思いますので明記しておきますね。
・パテ埋めで対応可能なら1,000円~5,000円程
・部分補修で1箇所10,000円~20,000円程
・下地のボード張替えで1枚20,000円~30,000円程
これに該当箇所の壁紙クロスの張替え代費用もプラスされます。

場合によっては「たかが壁の穴」とバカにできない金額となります。
くれぐれも「やりすぎ」にはご注意下さい。

そして最初にもお伝えしましたが、詳細は物件ごと・契約ごとに違ってきます。ご自身の賃貸契約書や管理会社にきちんと確認してくださいね。


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